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【連載第2回】イノベーションの鍵は「非合理」な情熱にあり! 「動力マネジメント」が解き明かす本質

はじめに:なぜ「正しい判断」が未来を閉ざすのか
前回の記事では、「合理的」な判断が必ずしも組織にとって最善とは限らず、むしろイノベーションのジレンマを引き起こす罠となりうることをお伝えしました。既存の事業効率を追求するあまり、未来への投資機会を見過ごしてしまう。多くの企業がこのジレンマに苦しんでいます。
では、どうすればこの罠から抜け出せるのでしょうか。その答えの鍵を握るのが、弊社が提唱する「動力マネジメント」です。
今回は、イノベーションの真の源泉である個人の「動力」とは何か、そしてそれを組織の力へと転換する「動力マネジメント」が、「合理的」「論理的」という概念をどう捉え直すのかについて、深く掘り下げていきます。
イノベーションの源泉=個人の「動力」
歴史を振り返ると、画期的なイノベーションの多くは、会社の計画や指示から生まれたものではありません。それは、一個人の「こんな未来を作りたい」「この課題をどうしても解決したい」といった、強い個人的な想いや、良い意味での「わがまま」から始まっています。
私たちは、この個人の人生観に根差した内発的なエネルギーを「動力」と呼んでいます。
この「動力」は、多くの場合、短期的・経済的な「合理性」とは相容れません。
- 誰もやったことがないから、成功確率を論理的に説明するのは難しい。
- すぐには儲からないから、投資するのは合理的ではない。
しかし、常識を覆すような挑戦は、こうした「非合理」な領域からしか生まれないのです。
「動力マネジメント」とは何か?
「動力マネジメント」とは、社員一人ひとりの「動力」を発見し、それを組織の目標と結びつけ、イノベーションを創造し続けるための仕組みです。
重要なのは、個人の「わがまま」を放置するのではなく、それを組織の中で「論理的」に位置づけ、実現可能な道筋を探っていくプロセスをマネジメントすることです。
動力マネジメントの要点:
出発点:個人の「非合理的」な情熱(動力)
プロセス:その情熱を実現するための「論理的」な思考と対話
ゴール:組織と個人の成長、そしてイノベーションの創出
つまり、動力マネジメントは、「合理性」の呪縛から思考を解き放ち、代わりに「論理」を武器として個人の情熱を支えるアプローチなのです。
「計画された偶発性理論」との共鳴
この考え方は、スタンフォード大学のジョン・D・クランボルツ教授が提唱した「計画された偶発性理論」とも深く共鳴します。この理論は、キャリアの8割は偶然の出来事によって決まるため、目標に固執しすぎず、好奇心や冒険心を持って行動し続けることで、偶然のチャンスを掴みやすくなるというものです。
ガチガチの計画(合理性の追求)に縛られるのではなく、個人の興味・関心(動力)を起点に柔軟に行動し続けることが、結果的に素晴らしい未来(イノベーション)につながる。動力マネジメントは、このキャリア理論を組織論に応用したものとも言えるでしょう。
結論:マネジメントすべきは「情熱」と「論理」の結合
イノベーションを生むためにマネジメントすべきは、コストや時間といった「合理的」な指標だけではありません。それ以上に、人の心に宿る「動力」という名の情熱と、それを形にするための「論理」という名の思考プロセスです。
社員の「これをやりたい」という声を、「非合理的だ」と切り捨てていませんか? その声にこそ、会社の未来を変えるヒントが隠されているのかもしれません。
最終回となる次回は、この動力マネジメントを日々の業務にどう落とし込み、「論理的思考」と「合理的判断」を使い分けていくのか、より具体的な実践方法について解説します。
第一回:https://hr.my-sol.net/media/useful/a188
第二回:https://hr.my-sol.net/media/useful/a189
第三回:https://hr.my-sol.net/media/useful/a190
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