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【連載第1回】なぜ私たちは危険を無視するのか?ビジネスを蝕む「正常性バイアス」の正体

【連載第1回】なぜ私たちは危険を無視するのか?ビジネスを蝕む「正常性バイアス」の正体
職場で火災報知器が鳴り響いた時、あなたはどうしますか?「また訓練か」「誤作動だろう」と、すぐに行動を起こさなかった経験はありませんか?
あるいは、東日本大震災の際、津波警報が鳴っても「まさか、ここまで来るはずがない」と感じた人々がいたという話を聞いたことがあるかもしれません。
これは、決して一部の人の特別な心理ではありません。予期せぬ事態に直面したとき、私たちの心は無意識に「これは正常の範囲内だ」と判断し、心の平穏を保とうとします。この心の働きこそが、「正常性バイアス」です。
このバイアスは、日々の小さなストレスから心を守るための、いわば「防御シールド」のようなものです。しかし、ビジネスという変化の激しい世界では、このシールドが判断を鈍らせる「目隠し」となり、個人や組織を深刻な危機に陥れる危険な罠に変わります。
第二回記事:https://hr.my-sol.net/media/useful/a202
第三回記事:https://hr.my-sol.net/media/useful/a203
「茹でガエル症候群」の恐怖
ビジネスにおける正常性バイアスの最も恐ろしい現れ方の一つが、「茹でガエル症候群」です。業績が少しずつ悪化しているのに、「これくらいはよくあることだ」「今だけだろう」と問題を過小評価し、気づいた時には手遅れになっている。これは、まさに正常性バイアスが組織全体を麻痺させている状態です。
- 競合の台頭: 「あの新興企業はニッチ市場向け。我々には関係ない」
- 市場の変化: 「新しい技術は一時的な流行。いずれ廃れる」
- 業績の悪化: 「今月の売上低下は季節的なもの。来月には回復する」
こうした「自分は大丈夫」「今までも大丈夫だったから、今回も大丈夫」という思い込みが、どれほど多くの企業を衰退させてきたことでしょう。
正常性バイアスは一人ではやってこない
さらに厄介なのは、正常性バイアスには強力な「共犯者」がいることです。
- 同調性バイアス: 「周りの誰も騒いでいないから、きっと大丈夫だろう」と、他人の無反応を見て安心してしまう心理。
- 現状維持バイアス: 「下手に変えるよりは、今のままの方がマシだ」と、変化そのものをリスクだと感じてしまう心理。
これらのバイアスが組み合わさることで、「何もしない」という選択が最も安全で合理的に見えてしまうのです。
まずは、私たち誰もがこの「見えない敵」を持っていると認識することから始めましょう。
次回予告
次回は、この正常性バイアスがビジネスの現場でどのような悲劇を引き起こすのか、戦略、コンプライアンス、人材マネジメントの観点から具体的な事例と共に掘り下げていきます。あなたの組織は本当に大丈夫でしょうか?
第二回記事:https://hr.my-sol.net/media/useful/a202
第三回記事:https://hr.my-sol.net/media/useful/a203
編集者: マイソリューションズ編集部 https://hr.my-sol.net/contact/