記事公開日
最終更新日
【連載第2回】あなたの会社は大丈夫?組織を蝕む「正常性バイアス」の罠と克服法

【連載第2回】あなたの会社は大丈夫?組織を蝕む「正常性バイアス」の罠と克服法
前回の記事では、予期せぬ事態を「正常」とみなしてしまう「正常性バイアス」の基本的なメカニズムについて解説しました。今回は、このバイアスが組織全体に蔓延したとき、具体的にどのような「高すぎる代償」を支払うことになるのか、そしてその罠から抜け出すための方法について掘り下げていきます。
第一回記事:https://hr.my-sol.net/media/useful/a201
第三回記事:https://hr.my-sol.net/media/useful/a203
ケース1:戦略的近視眼 ― 変化する市場からの脱落
かつて市場を席巻したコダックやブロックバスター。彼らはデジタル化の波を「一時的な流行」と過小評価し、既存の成功モデルに固執しました。これはまさに、組織的な正常性バイアスが招いた悲劇です。リーダーシップチームが過去の成功体験という「正常」に安住し、市場からの警告サインを無視し続けた結果、巨大企業でさえもあっという間に姿を消してしまったのです。
あなたの組織では、以下のような声が聞こえてきませんか?
- 「競合が値下げしているが、うちのブランド力なら問題ない」
- 「顧客の要望は多様化しているが、従来通りのやり方で十分だ」
これらは、変化の兆候から目をそらす危険なサインかもしれません。
ケース2:逸脱の常態化 ― リスクとコンプライアンスの崩壊
「これまでこのやり方で問題なかったから大丈夫」という言葉は、非常に危険です。製造現場での小さな安全規則違反や、オフィスでのコンプライアンスからのわずかな逸脱。これらが放置されると、いつしかそれが「当たり前」となり、組織の新たなスタンダードになってしまいます。
- 長時間労働: 「この業界では当たり前だ」という空気。
- ハラスメント: 「これくらいは許されるだろう」という甘い認識。
- 不正会計: 「この程度の調整なら、どの会社でもやっている」という思い込み。
一度「逸脱」が「正常」として定着してしまうと、大きな事故や不祥事が起きるまで、誰もその異常さに気づけなくなってしまうのです。
組織をバイアスから守るための処方箋
では、どうすればこの見えない敵から組織を守れるのでしょうか。重要なのは、個人の意識だけに頼るのではなく、「仕組み」としてバイアスに対抗することです。
- リーダーが「最高現実責任者」になる
リーダーの最も重要な役割は、組織に「建設的な不快感」をもたらすことです。悪いニュースを歓迎し、反対意見を奨励し、「本当にそうか?」と問い続ける姿勢を示すことで、組織の空気を変えることができます。 - 意思決定に「サーキットブレーカー」を組み込む
思考の慣性を意図的に断ち切る仕組みを作りましょう。- 悪魔の代弁者: 会議で意図的に反対意見を述べる役割を設ける。
- 第三者の視点: 外部の専門家や顧客の意見を定期的に取り入れ、内部の「常識」を疑う。
- データに基づく判断: 「勘」や「経験」だけでなく、客観的なデータに基づいて議論する文化を醸成する。
- 訓練とシミュレーションを徹底する
防災訓練が重要なように、ビジネス上の危機を想定したシミュレーションも不可欠です。市場の暴落、大規模リコール、サイバー攻撃など、リアルなシナリオで訓練することで、いざという時に思考停止に陥るのを防ぎます。また、正常性バイアスそのものについて学ぶ社内研修も有効です。
次回予告
組織的な対策の重要性が見えてきましたが、最終回では視点を変え、このバイアスを「逆手に取る」方法を探ります。顧客の「現状維持」という強固な壁を打ち破るマーケティング戦略や、抵抗勢力を乗り越えて組織変革を成功させるリーダーシップなど、より実践的な「攻め」のテクニックをご紹介します。
第一回記事:https://hr.my-sol.net/media/useful/a201
第三回記事:https://hr.my-sol.net/media/useful/a203
編集者: マイソリューションズ編集部 https://hr.my-sol.net/contact/