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あなたの一生を左右する2つのライフスキル「質問力」「定義力」

ー成果の差は「問いの質」と「言葉の精度」で決まる。
成果を出せる人と、そうでない人の違いは何か?
その一つの決定的な違いは、「正しい問いを立てられるか」「曖昧な言葉を放置しないか」にあります。
この2つを磨くスキルこそが、「質問力」と「定義力」。
目の前の仕事はもちろん、マネジメント・営業・育成・キャリア形成など、すべてに通底する“本質を見抜く力”の土台になります。
ちょっとしたお悩みでも、お気軽にご相談ください。
VUCA、少子高齢化、AI時代の生き方
時代は、誰もが「次に何が起こるか予測できない」時代、
いわゆるVUCA(変動性・不確実性・複雑性・曖昧性)の渦中にあります。
加えて日本は、少子高齢化・労働人口の減少・社会構造の流動化という問題が顕在化しています。
安定志向で選んだ大手企業が、数年でリストラを実施したり、
長年のやり方がAIや自動化によって一夜にして陳腐化することも珍しくありません。
そんな時代に必要なのは、「決まったことを正確にやる力」ではなく、
“何をやるべきか”を問い直す力です。
つまり、自分自身の立ち位置やキャリア、あるいはチームのミッションそのものを、問い、定義し、設計する力が問われているのです。
現代において最も重要なことは、問題を見つけること
現代のビジネスでは、「行動すること」よりも「正しい問題を特定すること」が成果の分かれ目になっています。
たとえば、あるIT企業では「残業時間が多い」ことが問題視されていました。
経営層は「生産性の低さ」と判断し、業務効率化ツールを導入。
しかし半年後も残業は減らず、実際の問題は「上司の承認プロセスが不透明で、社員が何度もやり直しを強いられていたこと」だったのです。
このように、表面的な“状態”と根本的な“原因”を取り違えると、すべての対策が的外れになってしまいます。
ハーバード・ビジネス・レビューでも指摘されているように、
組織の80%以上の失敗は「誤った問題設定」が原因で起きていると言われています(HBR, 2017)。
他者より早く問題を見つければ、早く解決策を出せる
ビジネスの現場では、問題の“発見タイミング”がその後の成果を大きく左右します。
たとえば、ある国内メーカーは、顧客アンケートで「製品の満足度は高いがリピート率が伸びない」という違和感を察知。
そこで営業担当にヒアリングを重ね、「価格面よりも、“使い方がわかりにくい”という初期体験の壁がネック」だと判明しました。
すぐにオンライン操作ガイドと初回無料サポートを整備した結果、
リピート率は6ヶ月で1.8倍に改善。
この事例のように、誰よりも早く“何かがうまくいっていない”と気づけた担当者が、組織にとっての変革の起点になります。
逆に、問題の放置はコストに直結します。ガートナー社の調査(2021)では、「問題の特定が3ヶ月遅れると、対策コストは平均で4倍に膨らむ」と報告されています。
問題を見つけるには「質問力」と「定義力」が必須
問題の本質にたどり着くためには、単に現象を見るのではなく、それを問い直し、言葉の意味を揃えていくスキルが欠かせません。
たとえば、あるスタートアップ企業で「会議が長い」という声が上がったとき、表面的には「時間管理が甘い」「司会進行が悪い」とされていました。
しかし、あるメンバーが「“会議の目的”って具体的にどう定義されていますか?」と問いかけたことで、メンバー間で“共有”と“意思決定”の目的が混在していることが明らかになり、会議を目的別に分けることで半分の時間に短縮されました。
ここには、
- 「そもそも何が問題か?」を掘り起こす質問力
- 「会議とは何か」「共有とは何か」という言葉を整理する定義力
が働いています。
マネジメントの現場では、この2つの力がある人ほど、チーム内の“沈黙している問題”を見抜き、行動につなげる力を発揮します。実際、マッキンゼーのレポート(2020)でも「問題発見力を持つマネージャーは、チームの生産性を25〜30%高める傾向がある」と示されています。
質問力とは
質問力とは、相手の思考を促し、潜在的なニーズや課題を引き出す力です。
単に情報を集めるための“質問のテクニック”ではなく、対話を通じて相手の気づきを促し、新たな視点や解決策を共に見出していくためのスキルです。
たとえば、部下が「このプロジェクトがうまくいかない」と悩んでいるとき、
「どこがうまくいっていないと思う?」「理想の状態ってどんな状態?」といった問いを投げかけることで、
本人が自分の思考を整理し、自ら問題課題に気づく場をつくることができます。
このように、質問力とは「答えを引き出す」ものではなく、
“考える場をつくる”ことそのものが、最も大きな価値になります。
特にビジネスシーンでは、以下のような場面で質問力が大きく機能します:
- 1on1での部下育成:「どうしたら成長できるか」を教えるのではなく、「どこに伸びしろを感じる?」と問いを立てて導く
- 会議での議論の深掘り:「そもそもこの問題にはどんな前提が隠れているか?」と“考える場”を立ち上げる
- 営業における顧客ニーズの発掘:「何に困っているか」より「何を理想とされているか」を探る
優れたリーダーは、答えを与えるのではなく、質問によって相手の思考を導くことで、組織と個人の成長を促進します。
問いかけの質が、その場の思考の深さ、未来の選択肢の多さを決定づけると言っても過言ではありません。
定義力とは
定義力とは、使っている言葉の意味を明確にし、共通理解をつくる力です。具体的には、以下の3つの力が含まれます。
① 言葉を定義づける力
「この会議の目的は“合意形成”です」と言ったときの“合意形成”とは何をもって成立とするのか?
「やる気がある」とは、どういう行動を指すのか?
このように、自分が使う言葉に具体的な基準や行動指標を添える力です。
② 定義のずれを発見する力
たとえば、上司が「スピード感をもって進めて」と指示したとき、部下が“1週間以内”と捉え、上司は“即日”を期待していた場合、そこには定義のギャップによる摩擦が発生します。
こうした「同じ言葉でも意味が違う」ことに気づくことが、信頼関係維持の第一歩です。
③ 組織の中で定義を整合する力
複数の部署で“目的・目標” “問題・課題” “戦略・戦術” といった言葉の解釈がばらばらなままでは、連携も育成もできません。
定義力の高い人は、言葉の基準を組織内で揃える役割を果たし、チームの共通認識と一体感を生み出すファシリテーターにもなれます。
まとめ
問いと定義から、すべての成果は始まる。
予測できない未来の中で、確かなことがあるとすれば、それは「答えが最初から用意されていない」ということです。
そんな時代に求められるのは、何を問うか、どう意味づけるかを考える力です。
質問力は、あなたの思考の地図を描く力。
定義力は、他者と地図を共有し、道を切り開いていく力です。
この2つのスキルは、個人の成長だけでなく、組織の文化を変える力を秘めています。「問い直す力」と「言葉を合わせる力」を身につけると組織が前進します。