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【前編】あなたの会社の研修、本当に意味ある?「成果が出る研修」の選び方、徹底解説!

はじめに
「多額の費用と時間をかけて研修を実施したのに、社員からは『意味がなかった』『時間の無駄だった』という声が…」
人事や研修の担当者なら、一度はこんな悩みに頭を抱えたことがあるかもしれません。
日本の企業研修市場は拡大を続けており、多くの企業が「人への投資」の重要性を認識している証拠です。特に、社員を重要な「資本」と捉え、その価値を最大限に高めようとする「人的資本経営」への注目が高まる中、人材育成は企業の成長を左右する重要な戦略となっています。
しかし、その一方で、多くの研修が期待された成果を上げられずにいるのも事実です。
この記事では、なぜ研修が失敗に終わってしまうのか、その構造的な原因を解き明かし、トヨタやソニーといった成功企業の実例から「成果の出る研修」の共通点を探ります。さらに、自社に最適な研修を見極めるための具体的なステップまで、分かりやすく解説します。
なぜ?多くの企業研修が「意味ない」で終わる3つの理由
時間もコストもかけた研修が、なぜ「意味ない」と一蹴されてしまうのでしょうか。その原因は、個人のやる気の問題ではなく、研修の「仕組み」そのものに潜んでいます。
1. 目的が曖昧で「他人事」になっている
研修が失敗する最大の原因は、その目的が会社の目標や現場の問題とズレていることです。前年と同じだから、流行っているから、といった理由で研修を企画してしまうと、それは単なる「年中行事」になってしまいます。
現場の社員にとって、自分の仕事と直接関係のない研修内容は「対岸の火事」でしかありません。例えば、全社一律のリスクマネジメント研修で、営業担当者が日々直面する顧客とのトラブルや、開発担当者が抱える技術的な問題といった具体的なテーマが扱われなければ、誰も真剣には聞きません。
「これは自分の問題を解決するための研修だ」と社員が感じられて初めて、研修は意味を持ち始めるのです。
2. 「聞くだけ」の研修で、実践の場がない
次に多い失敗が、講師が一方的に話し続ける「講義型」の研修です。ただ話を聞いているだけでは、知識は右から左へ抜けていくだけ。特に大人は、自分で考え、試し、フィードバックをもらうというサイクルを経験して初めて、スキルを身につけることができます。
成果の出る研修には、ロールプレイングやグループワーク、ケーススタディといった、参加者が主役になる時間が必ず設けられています。知識をインプットするだけで終わる研修は、たとえアンケートで「勉強になった」と書かれても、現場での行動変容にはつながらず、結局「意味のない研修」という評価に落ち着いてしまうのです。
3. 現場のフォローがなく「やりっぱなし」になっている
どんなに素晴らしい研修も、それだけで人が変わるわけではありません。研修で学んだことを職場で実践しようとしても、日々の業務に追われたり、上司や同僚の協力が得られなかったりして、いつの間にか元通り…という経験はないでしょうか。
研修を企画する人事部門のリソース不足や、部下を育てるスキルを持った管理職の不足は、多くの企業が抱える深刻な問題です。その結果、OJT(実務を通じた育成)が名ばかりの「放置」になってしまうケースも少なくありません。
研修を単発のイベントで終わらせず、学んだことを現場で実践し、定着させるための「仕組み」づくりがなければ、研修効果は半減してしまうのです。
成功企業は知っている!成果を出す研修、4つの共通点
一方で、社員の成長を確実に促し、会社の業績に貢献している研修もたくさんあります。成功している研修には、業種やテーマを問わず、いくつかの共通点が見られます。
1. ビジネスの成果に直結している
成功する研修は、常に「会社の特定の問題を解決する」という明確な目的から逆算して設計されています。「ものづくりは人づくり」という哲学を持つトヨタ自動車では、すべての研修が「より良いクルマをつくる」という最終目標につながっており、社員は自分の成長が会社の成果に直結することを理解しています。
「コミュニケーション能力を高める」といった漠然としたテーマではなく、「部門間の連携ミスを10%減らすためのコミュニケーション研修」のように、具体的なビジネス目標を設定することが成功の第一歩です。
2. 「学ぶ人」が主役になっている
成果の出る研修は、教える側ではなく「学ぶ側」の視点でデザインされています。オリコン顧客満足度調査で常に上位にランクインするSMBCコンサルティングやANAビジネスソリューションの研修は、参加者が楽しみながら主体的に学べる工夫に満ちています。謎解きを取り入れたチームビルディング研修などは、まさにその一例です。
また、三越伊勢丹の接客研修では、トップ販売員のスキルを分析して段階的に「見える化」しています。これにより、学ぶ側は自分の現在地とゴールが明確になり、何をすれば成長できるのかが具体的にわかるため、モチベーションが大きく向上します。
3. 現場での実践を後押しする仕組みがある
研修の本当の価値は、研修が終わった「後」に決まります。学んだことを現場で活かす「研修転移」を促す仕組みがあるかどうかが、成否の分かれ道です。
トヨタの「職場先輩制度」では、一人の新入社員に専属の先輩が3年間つき、OJTを通じて計画的に指導します。ヤマト運輸でも、新人ドライバーに先輩が同乗指導する「二人三脚」体制で、スキルを確実に現場で定着させています。
上司を巻き込み、組織全体で実践をサポートすることが鍵となります。
4. 会社全体で「学ぶ文化」を応援している
最後の成功因子は、会社全体に学習を奨励する文化があることです。ソニーグループには、上司の許可なく他部署に応募できる「社内公募制度」が1966年から存在します。これは、多様な経験を通じて社員の自律的なキャリアを支援するという、会社からの強いメッセージです。
また、サントリーホールディングスの「寺子屋」のように、社員が自主的に勉強会を開けるプラットフォームを用意することも、ボトムアップで学ぶ文化を育む上で効果的です。経営陣が自ら学びの重要性を語り、学ぶ社員を評価する姿勢を示すことが、組織全体の成長につながります。
編集者: マイソリューションズ編集部 https://hr.my-sol.net/contact/