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②「10手先を読む人」と「1手先を読む人」、ビジネスで勝つのはどちらか?将棋の戦略から、未来を勝ち抜く思考法 パート2

先を読む力:将棋から学ぶ、ビジネスと人生を勝ち抜く思考法 パート2

第2部:ビジネスという「不完全情報ゲーム」
このセクションでは、第1部で明らかにした将棋における「先を読む力」の原則を、ビジネスの世界に応用していきます。ただし、両者には決定的な違いがあります。ビジネスにおける先見性とは、確実な未来を計算するのではなく、不確実性を乗りこなすためのツールなのです。
2.1 将棋盤から市場へ:戦略的な考え方の応用
将棋で培われる戦略的な思考は、ビジネスの世界でも驚くほど役に立ちます。両者の間には、多くの共通点を見出すことができます。
- 大局観(戦略的ビジョン): 盤面全体の優劣や方向性を判断する棋士の感覚は、企業の長期的なビジョンや市場での立ち位置を考えることに相当します。
- 駒の配置(資源配分): 攻守のバランスを考え、駒を効果的に連携させることは、資本、人材、技術といった会社の資源を戦略的に配分するプロセスによく似ています。
- 手番の価値(イニシアチブ): 将棋で一手先んじることの価値は、ビジネスにおける先行者利益(first-mover advantage)や、市場の主導権を握ることの重要性と同じです。
これらの共通点から、将棋が単なるゲームではなく、戦略的思考を鍛えるための優れたモデルであることがわかります。
2.2 情報の壁:将棋とビジネスの決定的な違い
しかし、将棋とビジネスには、見過ごすことのできない根本的な違いがあります。それは「情報の完全性」です。ゲーム理論では、将棋は「完全情報ゲーム」に分類されます。盤上の駒の配置やルールなど、意思決定に必要なすべての情報がお互いに公開されており、隠された情報はありません。
一方、ビジネスは本質的に「不完全情報ゲーム」です。競合他社の戦略、未来の市場動向、新しい技術の登場、顧客の本当の気持ちなど、重要な情報が隠されていたり、そもそも不確実だったりします。
この違いは、「先を読む力」の役割を再定義します。将棋における先見性が、閉じた世界で最適解を見つけるための「計算ツール」であるのに対し、ビジネスにおける先見性は、予測不可能な世界で生き残るための「航海術」でなければなりません。ビジネスで先を読む目的は、起こりうる複数の未来のどれが来ても組織が成功できるように準備を整えることなのです。
2.3 孫子の兵法からの教訓:先見性で主導権を握る
2500年以上前に書かれた孫子の兵法が今もなおビジネスの世界で読まれているのは、それが不確実で情報が不完全な状況下での戦い方、つまりビジネス環境そのものの本質を論じているからです。
- 彼を知り己を知れば百戦殆うからず: この有名な教えは、ビジネスにおける徹底した市場分析(競合、顧客)と、誠実な自己分析(強み、弱み)の重要性を説いています。
- 有利な状況を作り出す: 孫子戦略の神髄は、力ずくで勝つことではなく、戦いが始まる前に、戦いの舞台を自分に有利なように整えることにあります。「善く戦う者は、人に致して人に致されず」(戦上手は主導権を握り、相手に主導権を握らせない)という言葉が示すように、状況を先読みし、主導権を握ることが勝利の鍵です。
これは、競合の動きに反応するだけでなく、まだ誰も手をつけていない市場(ブルーオーシャン)を積極的に見つけて進出すること、顧客自身がまだ気づいていないニーズを予測して製品化すること、そして業界のルールを自ら作っていくことを意味します。孫子の教えは、不完全な情報の中でいかにして戦略的優位性を築くかという、時代を超えた普遍的な原則を教えてくれます。
パート1はこちら → https://hr.my-sol.net/media/useful/a148
パート3はこちら → https://hr.my-sol.net/media/useful/a152
パート4はこちら → https://hr.my-sol.net/media/useful/a151
編集者: マイソリューションズ編集部 https://hr.my-sol.net/contact/