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【第1回】あなたの「当たり前」を疑う力、"相対化"とは?- 変化の時代を生き抜く思考法

【第1回】あなたの「当たり前」を疑う力、"相対化"とは?- 変化の時代を生き抜く思考法
はじめに
「なぜかいつも同じことで悩んでしまう」
「他人の意見に流されて、自分の考えが言えない」
「ストレスを感じやすい…」
もし、あなたがこんな風に感じることがあるなら、それは「視点」が凝り固まっているサインかもしれません。目まぐるしく変化する現代社会で、しなやかに、そして力強く生き抜くために、今、一つのスキルが注目されています。それが「相対化」の力です。
この連載では、動力マネジメントトレーナーの視点から、この「相対化」という最強の思考ツールを3回にわたって解き明かしていきます。第1回は、まず「相対化とは何か?」その基本から探っていきましょう。
「相対化」って、一体なんだろう?
難しく考える必要はありません。相対化の核心は、とてもシンプルです。
ある一つの見方や考え方を、「それが絶対に唯一の正解ではない」と捉える力。
つまり、自分の視点から一歩引いて、もっと大きな地図の中で物事を眺めてみる、そんな認知のスキルです。
哲学の世界には「相対主義」という考え方があります。これは、「背が高い」という人がいるのは「背が低い」人がいるからこそ意味を持つように、あらゆる物事は他のものとの関係性の中で成り立っている、という思想です。私たちがここで学ぶ「相対化」は、この考え方を応用した、実践的な心の技法なのです。
もう一人の自分を持つ「自己相対化」
このスキルを自分自身に向けてみると、さらに強力なツールになります。それが「自己相対化」です。
これは、普段「私」だと思っている自分の感情や思考、自己イメージといったものを、少し離れた場所から客観的に眺める能力を指します。
例えば、仕事で失敗して「もうダメだ…」と落ち込んでいるとき。
自己相対化ができると、その感情にどっぷり浸かるのではなく、
「なるほど、今、"私"は失敗という経験をして、ひどく落ち込んでいるんだな」
と、まるで他人事のように観察することができます。
この「自分との距離」が、感情の渦に飲み込まれるのを防ぎ、冷静さを取り戻すための大切なスペースを生み出してくれるのです。
なぜ今、「相対化」が必要なのか?驚くべき4つのメリット
このスキルを身につけると、仕事や人生の様々な場面で、驚くほどの効果を発揮します。
- 意思決定の質が劇的に上がる
一つの意見に固執せず、複数の視点から物事を比較検討できるようになるため、根拠のない情報に惑わされず、物事の「本質」を見抜くことができます。結果として、より的確な判断を下せるようになります。 - ストレスに強くなり、心が軽くなる
嫌な出来事があったとき、それを客観的に「観察」することで、ネガティブな感情との間に心理的な距離が生まれます。これにより、ストレス反応が和らぎ、冷静に対処できるようになるのです。 - 新しいアイデアが生まれる
「いつもこうだから」という固定観念から自由になり、多様な可能性を検討できるようになります。この視点の転換こそが、イノベーションや画期的な問題解決の源泉となるのです。 - 人間関係が豊かになる
自分の視点を絶対視しないことで、相手の意見や立場を心から理解しようという姿勢が生まれます。これが共感力を育み、コミュニケーションを円滑にし、信頼関係を深める土台となります。
結論
いかがでしたでしょうか。「相対化」は、単なる思考法ではなく、複雑な現代を生きる私たちにとって、心を整え、可能性を広げるための強力なサバイバルスキルです。
しかし、多くの人がこのスキルの重要性を知りながら、なかなか実践できないでいます。特に、私たち日本人にとっては、この「相対化」を難しくさせる特有の文化的・社会的背景が存在します。
次回、【第2回】では、「なぜ日本人は空気を読んでしまうのか?- "相対化"を阻む3つの壁」と題して、その謎を深掘りしていきます。どうぞお楽しみに。
第1回:https://hr.my-sol.net/media/useful/a180