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第1回:アンパンマンはなぜ戦うのか?-「他者への奉仕」というマネジメントの形

今、NHKの連続テレビ小説「あんぱん」が大きな話題となっていますね。アンパンマンの作者、やなせたかしさんと小松暢さんご夫妻の物語も、いよいよ今週が最終回。このタイムリーな時期に、国民的ヒーロー「アンパンマン」の持つ深い哲学について、改めて考えてみたいと思います。
多くのヒーローが圧倒的なパワーで敵を打ち破る中、アンパンマンは少し違います。彼の最大の特徴であり、物語の核となるのは、お腹を空かせた人に自らの顔(あんぱん)を分け与える「自己犠牲」の精神です。

アンパンマンの本質は「他者への奉仕」
自分の顔を分け与えるという行為は、自らの力の源泉を削ぐことを意味します。顔が欠ければ力が出なくなり、ジャムおじさんに新しい顔を焼いてもらうまで、彼は無力になってしまいます。つまり、アンパンマンは他者を助けるたびに、自らが弱くなるという、世界的に見ても極めてユニークなヒーローなのです。
彼の力の根源は「勝利」ではなく「奉仕」。その行動原理は、ただひたすらに深い「愛」と「勇気」にあります。
「倒すべき敵」よりも「救うべき者」へ
アンパンマンの物語で興味深いのは、宿敵ばいきんまんとの関係性です。彼はばいきんまんを完全に消滅させようとはしません。必殺技の「アンパンチ」は、悪さを懲らしめるためのものであり、決してとどめを刺すためではないのです。
なぜなら、彼にとっての最優先事項は、敵を打ち負かすことではなく、困っている人を助けることだからです。彼の視線は、常に対峙する敵ではなく、守るべき人々の方をまっすぐに向いています。
この徹底した「自己犠牲」と「他者への奉仕」というテーマは、なぜこれほどまでに、時代を超えて私たちの心を打ち続けるのでしょうか。次回は、他の日本のヒーローと比較しながら、その特異性をさらに探っていきます。
またその先に見える新しいマネジメントについて考察します。
連載シリーズ
- 第1回:アンパンマンはなぜ戦うのか?-「自己犠牲」というマネジメントの形
- 第2回:ウルトラマン、仮面ライダーとの違い-日本のヒーロー像の多様性
- 第3回:あなたのリーダーはどのタイプ?-ヒーロー像で読み解く日本のマネジメント
- 第4回:アンパンマン型リーダーシップを科学する-「動力マネジメント」で最強のチームを作る方法